どんなに小さな結婚式でも、きっとそこには
挙げる意味がある。それを伝えるのが私の役割
プランナー歴6年。ブライダルの専門学校卒業後アメイジンググレイス前橋に就職。インフォメーションの経験を経てウエディングプロデュサーへ配属。ふと出る言葉にもしっかり耳を傾けメモを取ることを心掛けている。
「結婚式は挙げなくていいんです」新郎の本音が聞けないもどかしさ
「写真だけ撮れればいいんです」。新郎新婦が来館された初日、開口一番にその言葉を聞きました。写真だけならフォトスタジオで事が足りる。ではなぜ、結婚式場であるアメイジンググレイスに?
率直に質問してみると、新郎の口からは「無理やりです。結婚式って面倒じゃないですか」と。家族の仲も良くないし友達もいないと語る新郎の横で小さくうなずく新婦。少し浮かない表情が気になり、「新婦様はいかがですか?」と尋ねると、「ウエディングドレスは小さい頃からの憧れ。それを着て大好きな家族に感謝を伝えたい、結婚式を挙げることが諦めきれない」と。新婦のまっすぐな想いから、家族9人の結婚式を挙げることになりました。
しかし、そもそも乗り気ではなかった新郎。家族のお話も何も聞きだせません。真剣な話をするとすぐに冗談を言って話題を変えてしまう。何を考えているのか本音を聞くことができません。そこで普段は最終の打ち合わせまでにお願いしているプロフィールシートを、あえて最初の宿題として出したのです。しかも「必ず二人で一緒に書いてください」を条件に。
プロフィールシートで引き出した、新郎の本音と二人のキモチ
いよいよ提出日です。開いてみると、新郎のプロフィールシートは文字でびっしりと埋め尽くされていました。毎年キャンプに行った話、弟と兄弟でよかったという想い。そこには家族に対する愛があふれていました。新郎は、ただ恥ずかしいだけだったと、やっと気づいたのです。 このプロフィールシートを通して、今まで別々の人生を歩んできた二人が、お互いのことをもっと知り、今以上に大切な存在であることを感じていただけたのです。 さらに私が大切にしたかったもう一つの提案。それは新郎から家族への謝辞でした。しかし、「それは無理」と、新郎からはあっさり断られてしまいます。
- それまで家族への愛を恥ずかしさから口にできなかった新郎。最後に感謝の言葉を伝えることができ、感動のシーンに。やはり結婚式には挙げる意味があり、式をすることでしか伝わらない言葉もある。この感動をもっともっと広げていきたい!そう感じた瞬間でした。
結婚式は「本当のキモチ」を伝える大切な機会
結婚式当日、家族と過ごす時間のなか、次第に新郎の顔も温かく和やかに。「今なら素直な気持ちを伝えられるかもしれない。チャンスは今日しかない」と、もう一度あの提案をしてみました。すると「キレイな言葉では伝えられないかもしれないけど…」と想いを伝える約束をしていただけたのです。「今まで迷惑をかけてごめん。これからもよろしく」。不器用だけど一生懸命なそのひと言に涙が流れます。そして、「息子があんなふうに思っていてくれたことを知って、本当に嬉しかった」とご両親からも。
結婚式を終えて「あー嫌だ、泣いちゃった。河内さんのせいだから」と言っていた新郎ですが、家に帰った後、「結婚式をしてよかったね。親のあんな表情、初めて見た」と嬉しそうに語っていたそうです。
結婚すれば、恋人同士では気づかなかったこと、理解し合わなければいけない部分が多くあると思います。今回の二人にとって結婚式は、そのためのなくてはならない、大切な時間になったと信じています。
式を挙げる本当の意味を伝え続けなければ、挙式をしないカップルは増え続けてしまうでしょう。だからこそ、その意味を伝え続けていかなければいけないのです。
「本当のキモチ」を伝える場を提供するために、プランナーとして結婚式の大切さを伝え続けていきたいと感じています。
- ドレスを着て両親に感謝を伝えたい、その新婦の願いも式を通して実現できました。式後には、「結婚式をしてよかった」とのお言葉も。
結婚式に込められた意味、一つひとつを知っていただく
こだわりがなくても結婚式を挙げていただく以上は、二人が夫婦としてスタートを切る場であってほしい。ベールダウンや指輪交換、誓いの言葉、その一つひとつに意味があるもの。その意味をしっかり伝え、結婚式はただ挙げるだけのものではなくこれから先の夫婦生活にとって大切な時間になることを知っていただくことに価値があると考えています。
審査員の目
結婚式は「自分の中の本当のキモチ」に気付き、向き合える大切な機会。それができて初めて素直に配偶者や家族と気持ちを伝えあえ、結婚式は意味深いものになるのだと改めて気付かされました。そこには「本当のキモチ」を丁寧に引き出すプランナーの存在が必須。河内さんの心のこもった臨機応変な対応は、意味のある結婚式にしたいという河内さんの熱い想いゆえでした。(2015年10月15日更新)