リクルートブライダル総研は、結婚に関する調査・研究、未来への提言を通じて、マーケットの拡大と社会課題の解決に取り組みます。

piece of journey ~愛を浴びて ヒカリカガヤク~

目の前の人の感動を創るのがプランナーの仕事。
結婚式が大好きな気持ちを原動力に特別な瞬間を創り出す。

木山 妃香璃(きやま ひかる)さん
ララシャンス博多の森(福岡県)

プランナーになりたい!と熱い想いを持って専門学校に入学。IKKの人たちと一緒に働きたい、と現在の会社に入社。趣味はダイビング。最近は、寝る前に1本映画を観ることにハマり中。

憧れのプランナーになったものの結婚式ができない事態に直面
そんな中出会った2人の苦悩

 私は高校生の頃、プランナーという仕事に出会い、アルバイトで心が震える結婚式体験をして「この時間を自分で創りたい」と思いました。仕事に就き、走り出して間もない頃に突入したコロナ禍。お客様はたくさんいるのに、結婚式ができません。大好きなお客様の涙を見るうちに、自分の存在価値がわからなくなり、無力感に襲われる日々が続きました。

 そんな時、私はおしゃべりが大好きな新婦と口数の少ない新郎を担当しました。式の準備は順調。しかしその矢先、医療従事者である新婦のゲストから欠席連絡が相次いだのです。「ゲストがいないならやる意味がない」と、心が疲弊していく新婦。日々励ましながらも、私の心もボロボロでした。「こんなに辛い想いをさせるくらいなら、キャンセルで楽にさせてあげたい」と、何度思ったことでしょう。でも私の仕事は結婚式のプランニングではなく、目の前の人の感動を創ること。結婚式には、人々の心を揺さぶる特別な瞬間があります。そのパワーを信じて、辛い気持ちをぶつけてもらいながら、どう選択するかを一緒に整理していきました。「結婚式をする意味を今だからこそ考えていきましょう」と励まし続けた結果、2人は「コロナ禍の今だからこそ、大切な人たちに感謝を伝える機会を設けたい」と、挙式だけの開催を決断しました。

2人の決断を正解にしたい
サプライズの披露宴の入場体験が感動の挙式のクライマックスに

 披露宴を諦めたことで、「挙式なら参加できる」と嬉しい返信が続々届きました。私ができるのは、2人が決断した道を正解にすることです。2人が台湾旅行で飛ばした思い出のランタンにならい、全員でランタンバルーンを空に放つ演出。挙式のみだからと一度は諦めたのですが、私たちの後押しで実現できました。

 また式後、どうしても2人のために用意したかったのは、サプライズでの披露宴の入場体験。大切なゲストの顔を一度に見ることができる、愛あふれる瞬間を体験してほしかったからです。挙式のみの場合、披露宴会場は本来使えませんが、支配人にかけ合って特別に許可をもらいました。会場に案内したゲストに私は震える声で、これまでの2人の涙と葛藤や、大切なゲストに感謝を伝えたいがために挙式の開催を決断したことを伝えました。うなずき、涙し、同意してくれるゲストの皆さん。このサプライズは、2人とゲスト全員にとって意味のある時間になる、と確信が持てました。

 私は「お2人に会いたい人がいます」と2人を入口に誘導し手紙を読みました。「今日は素晴らしい1日でしたね。でもやっぱり、どの一瞬を切り取っても、愛と感動が溢れる披露宴を体感してほしかったです。だから今日は少しだけララシャンスからプレゼントさせてください」。流れてきたのは、新婦が入場時に流したかったと言っていた曲。割れんばかりの拍手に包まれて入場する2人。泣き崩れながら感動をかみしめる新婦と、それを優しく見守る新郎。この時間のためにプランナーをしているんだ、と私はとてつもなく心を揺さぶられました。

「披露宴を2人に体感してもらいたい」と企画した、サプライズの入場体験。ゲストへの事前説明では、いつも明るく笑顔の新婦が、大切なゲストのために悩んで涙しながらこの日を迎えたことも伝えることができました。

2人と困難を乗り越えたことでどんな状況でもブレなくなった軸
新郎新婦の光り輝く未来を願って

 この結婚式は、私1人では創れないものでした。日頃から声を拾ってくれる支配人、信頼できる上司、想像以上に力を貸してくれる仲間。私の情熱に、一人ひとりが応えてくれました。本当に、このチームを誇りに思います。

 私の使命は、結婚式によって、関わる人すべてを幸せにすること。結婚式が何よりも大好きだからです。この尊い時間を未来に届けたい。想いが連鎖し続けると信じているから、私は絶対に諦めません。

「挙式のみだからこそこだわりを取り入れて、今までにない最高の挙式を」と創った結婚式。人と人とのつながりの尊さを思い、「大切な方たちに感謝を伝える機会を設けたい」と2人は決断しました。

評価のポイント

ただ結婚式が好きで、がむしゃらに頑張ってきた木山さんがぶち当たった「コロナの壁」。新郎新婦の嘆きを受けとめもがき苦しみながらも、感動を創るために立ち上がる姿が聴く人の心を打ちました。また、サプライズ入場体験のために集まっていただいたゲストに、これまでのふたりの苦しみや葛藤、結婚式にかける気持ちを代弁して伝える様子は、新郎新婦とゲストの間に立って両者をつなげる、新しいプランナーの役割をも感じさせてくれました。