リクルートブライダル総研は、結婚に関する調査・研究、未来への提言を通じて、マーケットの拡大と社会課題の解決に取り組みます。

屋久島ウエディング

二人の頭の中にできているイメージを
実現するサポートが役割と思い、動きました。

宗利 紀里(むねとし きり)さん
キャンディータフト(兵庫県神戸市)

ブライダル歴26年。独立開業し12年。心理学を学び5年前に心理カウンセラーの資格を取得。結婚や恋愛に関するセミナーと新郎新婦の結婚前カウンセリングも行う。日頃からカップルの相談、講師をしているブライダルプランナー養成学校の生徒達の恋愛や結婚の相談に乗ることも生き甲斐になっている。

4年前に二人が出会った屋久島で、ホームパーティーのような結婚式を

 二人は、お互い一人旅の最中に、屋久島の黄色い魚の描かれたバス停で出会いました。そんな思い出の地、屋久島の自然の中で、親しい友人と親族だけのホームパーティーのような人前式のウエディングをしたい。それが二人のご要望でした。
 そこでアットホームな雰囲気を実際に作り出すために、海のそばのウッドテラスのある料亭旅館を前日から貸し切り、30 名のゲスト全員に前日から宿泊をしていただいて、一緒に夕食をとり、露天風呂にも入って顔見知りになっていただきました。挙式は、砂浜で新郎新婦をゲストが丸く囲んでの人前式。前日に拾ってきた流木に、ゲストの皆さんから承認のサインをいただき、結婚の誓いの証書と一緒にランタンにおさめて、式の中で鍵をかけました。披露宴は、料亭に戻りウッドテラスで。屋久島の海の幸を自分たちで焼くバーベキュー形式です。ウエディングケーキ、屋久杉で作った箸置き、ペーパーアイテム、招待状、席次表のデザインには、すべて二人が出会った場所にあった黄色い魚のデザインを使用しました。また、お花畑のような披露宴会場をという新婦の願いには、たくさんの草花風のお花をテーブルいっぱいに飾りました。他にも二人の要望を叶えるために、思い出のロケーションや初めて出会ったバス停での撮影を行ったり、当日来られない方のために、インターネットでの同時配信も行いました。

水平線の見える広大な自然の中で、みんなに囲まれて承認してもらう人前式にしたい。砂浜に青い布を敷いたバージンロードで印象に残る挙式スペースをつくるだけでなく、ゲストにも前日から宿泊してもらいアットホームな関係性をつくった上で、式は行われた。

現地業者とコミュニケーションを深めながら、プランの実現を模索。

 しかし、プラン実現までには数々の困難がありました。中でも苦労したのが会場選びです。紆余曲折の末にやっと見つけた会場。いったんOKをもらっていたその会場から、本番3ヶ月前に人手が足りないから無理とお断りされてしまったのです。もう何度も電話をして、とにかくそこの女将さんの話を愚痴も含めて友達のように伺いながら、根気強くお願いし続けました。1ヶ月後、「もう根負けやー」と承諾してくださいました。
 お花の手配も大変でした。いつもお願いしている東京のパートナーにお花を贈ってもらう予定だったのですが、震災があり届かない心配が出てきたのです。急遽、屋久島に一軒しかない、現地のお花屋さんに連絡。しかし新婦が望む草花風のお花が果たして手に入るのか、不安がありました。一生懸命お願いしたところ、鹿児島から仕入れていただけることになりました。
 そしてもう一つの苦労が、ウエディングケーキです。三十人分ものケーキを引き受けてくださるケーキ屋さんは、屋久島にはありませんでした。探し回った末、何とか和菓子屋さんに引き受けてもらえ、思い出の魚の形のケーキを実現できたのです。

二人が出会ったバス停の窓に描かれていた黄色いオサカナをモチーフに、ケーキやアイテムをデザイン。

お二人らしい結婚式、こだわりの実現を最後まで貫きたい。

 当日も天候という大きな困難がありました。数日前からの大雨は、当日夜が明けてもまだ降り続いていました。屋外か室内かで会場のレイアウトも変わるため準備もできません。できれば屋外で実施したいと天に祈っていると、なんと朝6時半に雨があがったのです。挙式のスタートは9時。急いでウッドテラスを雑巾でふき、一生懸命乾かします。料亭のご主人がガスバーナーであぶってくれたりもしました。それから砂浜に移動し、コンパネを敷きつめ、その上にブルーの布をひいてバージンロードを作成。短時間でしたが、一生懸命設営し、何とか間に合いました。前日から徹夜でしたが、披露宴中も司会をし、人手不足の会場の手伝いで料理も運んでと、大変でしたが無事に披露宴を終えることができました。その甲斐もあり、二人にとっては「忘れることのない」、またゲストにとっても「何かで屋久島を見るたびにこの結婚式を思い出す」と言ってもらえる、幸せな結婚式になりました。

パートナーの協力があってこそ実現できる

 今回、新郎新婦は東京在住、私は神戸、会場は屋久島と、今までで一番遠い距離のプロデュースでした。二人との打ち合わせも、会って話せば伝わる感覚的なものをメールでいかに伝えるか気をつけました。急な変更なため電話だけで手配した現地業者とは、小さなことでも、都度メールやFAX、電話でコミュニケーションを取り、相手の立場や状況を慮ってお伝えするようにしました。いつものことながら、本当に業者の方々の協力があったから実現できました。ウエディングはチームワーク、本当に素敵な仕事だなと実感しました。

審査員の目

 カップルの思い出の地である屋久島で行われた結婚式。浜辺に敷かれた青いバージンロード、野の花に囲まれたパーティ、思い出のモチーフ「黄色い魚」のケーキ等、フリープランナーならではの提案力と、現地でパートナーを得ながらプランを実現する行動力が高く評価されました。(2011年9月30日更新)