リクルートブライダル総研は、結婚に関する調査・研究、未来への提言を通じて、マーケットの拡大と社会課題の解決に取り組みます。

10年間の感謝の想いを込めた、家族の絆を結ぶサプライズ結婚式

お客様の願いを形にするために、時には、
一歩踏み込んだ提案をしなければいけない。

鈴木 裕美子(すずき ゆみこ)さん
群馬県・ロイヤルチェスター太田

プランナー歴9年。打ち合わせではとにかく話を聞く事を大事にしている。そこから隠されたこだわりのポイントを見つけ、進行や演出への提案につなげられるキーワードを見つけるよう、心がけている。

10年目の結婚記念日。旦那様が奥様へプレゼントしたのは、「結婚式」でした。

 「結婚式をしてなくて、10年目の記念日に、かみさんに内緒で結婚式をしたいんです。」新郎のそんなお電話から始まった新郎と二人での打ち合わせ。色々とお話を伺い、「絶対成功させましょう!」と盛り上がっていた矢先、思わぬ壁にぶつかりました。サプライズという特殊な結婚式に、一部のご親族から反対があったのです。相談した結果、友人を招待する事だけサプライズにして、新婦や二人のお子様にも結婚式をする事は伝え、改めて家族との打ち合わせがスタートしました。
 新郎のサプライズ結婚式の思いつきを知らないまま、とても嬉しそうにドレスを選んだり、お花やケーキを決めていく新婦。一方、先日まで一生懸命だった新郎が、全く意見を言わなくなってしまったのです。この新郎の姿に、このままでは、新郎がサプライズ結婚式に込めていた思いがどこかに消えてしまう気がし、複雑な気持ちでした。

式の1週間前にお互いに内緒でインタビューを撮影し、その映像をお互いへのサプライズで上映。普段泣いた事のない新郎の涙に新婦もゲストも号泣。ゲストへ、そしてお互いへ、10年目の結婚式への新郎新婦の思いを届けました。

10年間の思いが詰まった新郎の涙。それを全てのゲストに伝えなければ。

 モヤモヤを抱えたまま迎えた最後の打ち合わせで、急遽、新郎と新婦を別々にインタビューする 事にしました。お互いの今の気持ちや、今まで言えなかった言葉を聞き出せればと思ったからです。
 結婚式をあげられず、ドレスを着させてあげられなかっ たことへの後ろめたさを語る新郎。そして結婚式への意気込みを伺うと、涙で声を詰まらせたのです。私はこの涙に、正直どうしたらいいのか分からなってしまいました。この映像は、元々提案していた当日までのドキュメント映像に入れて、結婚式が終わった後に見て頂くつもりで撮影したものです。でも私は思ったのです。この結婚式の本当の意味は、新郎のあの涙に全てつまっている。そこには、10年間伝えたかった想いが溢れていて、新婦だけではなく、全てのゲストに伝えるべき、この結婚式で一番大切な事ではないかと。そしてそれを伝えるためにはインタビューの上映が不可欠だと思い、新郎にお話ししました。ところが恥ずかしいからとあっさり断られてしまったのです。結婚式まで2日。絶対に流したいとあきらめきれず、新婦を、内容を知らせないままこっそり説得し、新郎にはサプライズとして当日流すことをご了解頂きました。

式当日に、内緒で集まってくれた二人の友人たち。新郎からのサプライズに、新婦は大号泣。

結婚式はゴールではなくスタート。未来につながるものになるように

 もう一つ新婦へは「20年後の子供たちへ」という、愛するお子様への未来へのメッセージをお願いしました。今回私は、誰かが誰かへ、全員がサプライズの対象になるような仕掛けをしました。一つ一つのサプライズが、新郎新婦だけではなく、お子様やゲスト、全ての方々の幸せな未来につながる、大きな意味を持つものになりますようにという想いを胸に。そして感動の結婚式が幕を開けたのです。
 普段は泣くことのない新郎の涙の映像に、びっくりしながらも照れ臭そうに泣き笑いする新郎新婦。そして、新郎から新婦への10年分の感謝の言葉。10年目の夫婦の絆が、きつく結ばれた瞬間でした。式の後、お叱りを頂くかもと思っていた新郎が、一言「ありがとうございました」と握手してくれた時、私のした事は間違っていなかったと嬉しくて涙が出ました。お二人それぞれの気持ちを映像で観て頂くというサプライズで、その想いが深くゲストの心に入り込み、祝福の気持ちが一つになり、この結婚式を何十倍も素敵な時間にしたのだと思います。

プランナーは、お客様に生かされている

 結婚式は様々な人々の想いが重なり“絆と感謝”がカタチになる尊い時間。二人のインタビューを見ていただくというサプライズから、その思いが深くゲストの心に染み入り、祝福の気持ちが一つになり、この結婚式をより素敵なものにしました。そして20年後も解けることのないよう、家族や夫婦の絆を結びなおすことができたのだと思います。一組のお客様が式を終えるたび、その笑顔や涙からパワーをもらい、生きている、生かされていると感じます。これからも、二人の思いを形にし、大切な人との「絆」をしっかり結び直すお手伝いができる喜びを忘れず、日々精進して参りたいと思います。

審査員の目

 お叱りに繋がりかねないその判断ができたのは、鈴木さんが背景にある夫婦の関係性や歴史をきちんととらえ、何が「二人の未来のため」なのかに真剣に向き合えていたからに他なりません。また「未来の子供へのメッセージ」など、映像を効果的に使用し、夫婦や家族、友達との繋がりを強く結び直した点が高く評価されました。(2012年10月22日更新)