リクルートブライダル総研は、結婚に関する調査・研究、未来への提言を通じて、マーケットの拡大と社会課題の解決に取り組みます。

70年の時が築いた「愛溢れる一日」 ~大切な人と共に~

結婚式をしたい。シニアであってもかわらない
その気持ちに寄り添い、夢を叶えていきたい

中田 聖美(なかた きよみ)さん
ベルクラシック神戸(兵庫県神戸市)

プランナー歴7年。式当日まで新郎新婦と会わないスタッフにも、二人のことや結婚式のテーマやポイントなどを自然に ってもらうため、事前から各部門担当へ何度も話に行くようにしている。

70歳で聴覚障害をお持ちの新郎新婦。高齢のゲストにワクワク・ドキドキを

 共に聴覚障害をお持ちの新郎と新婦。20代で友人として知り合い、その後は別々の地で暮らし会うこともなかったそうですが、70歳を目前にして運命的に再会。残りの人生を有意義に充実した生活をしたいと互いに感じ、70歳での結婚を決意されました。優しく朗らかな新郎と、とてもポジティブで明るく、結婚式を夢見るかわいらしい新婦。70年という時を過ごした自分たちがこうして幸せな瞬間を迎えられるのは、今まで支えてくれた家族や友人のおかげ、だから結婚式をきちんとして感謝の気持ちを伝えたい。そして、家族や友人も高齢となり気持ちも暗くなりがちなので、ワクワクやドキドキを感じられるような、とにかく明るく笑顔あふれる結婚式にしたい。それが二人の希望でした。  二人との打ち合わせは、筆談を中心に進めていきました。通常より時間がかかるため、高齢の二人には負担が大きいのではと心配もありましたが、常にポジティブで「今の若い人たちは、どんなことをしているの?」と興味深く聞いてこられました。

挙式は教会式。70歳の二人がタキシードとウエディングドレス姿で登場すると、大きな歓声があがりました。全員で讃美歌を歌いたいという希望には、手話通訳の方にお手伝いいただくことで、聴覚障害をお持ちの参列者にも一緒に歌っていただけました。

結婚式でキラキラと輝きたい。花嫁の気持ちに年齢や障害は関係ない

 新婦は当初、楽に着られる持ち込みの衣装を検討されていましたが、より当日を最高の状態で輝きたいと、当式場のウエディングドレスとカクテルドレスを選んでいただけることになりました。目をキラキラと輝かせながらドレスを選ぶ新婦。そんな姿を見て、年齢や障害にとらわれて、その対応にばかり向いていた気持ちが、世界一幸せな瞬間を味わっていただくために最高の提案をしたい、そんな気持ちへと切り替わっていきました。美容スタッフへも二人の様子をしっかりとお伝えし、新婦が気にされていた点滴の痕をボディメイクでカバーするなど事細かな提案もできました。すると新婦は、「もっときれいになるためにエステもしたい」と、さらに前向きに打ち合わせを進められるようになりました。

披露宴ではゲストとのふれあいと、ワクワク・ドキドキ感を大事に演出

その後の人生の糧となる結婚式の思い出をしっかりと残したい

 一方で、結婚式で得られる大切な気持ちや思い出を、きちんと二人やゲストに残すことができるか、不安もありました。各部門のスタッフに想いを伝え、様々な協力やアドバイスをいただきました。聴覚障害のある二人には、通常のビデオ撮影では結婚式の全てを残すことができないと思い、当日は通常のカメラマンの他に、二人や聴覚障害者のゲストのために手話通訳の方を映すための専用カメラを手配しました。テロップを入れてゲストや二人の思いを伝えるという方法も考えましたが、大切な友人でもある通訳者の表情も思い出になると考え、編集で手話通訳者のワイプを作りました。高齢の二人にとって日常生活と何ら変わりなくご覧いただけるよう工夫することで、人生の糧となる結婚式の思い出を二人にもしっかりと残すことができたと思います。当日は、スタッフが通常より高めの年齢層になるようにし、高齢のゲストの皆様にも安心と細やかな気配りができるようにしました。また、聴覚障害をお持ちの皆様へお伝えすることなどは全て紙に書き出しておき、スタッフはそれを持ってご案内をしました。
 お開き後のスタッフからの挨拶では、スタッフ全員が「本日は誠におめでとうございます。末永くお幸せに!」と手話でお伝えしました。実は二人に喜んでいただけることを何か出来ないだろうかと、スタッフみんなで考え、一夜漬けで手話を覚え、練習したのです。二人はとても驚いて喜ばれ、私たち自身もほっと温かい気持ちになれた瞬間でした。

年齢や障害で、何ら変わることはない。精一杯の気持ちで大切な瞬間をつくる

 70歳で結婚式をしたいと、熱い気持ちを持って来られた二人でしたが、同様に40代、50代、60代の方で、今からでも結婚式がしたいと思っている方はたくさんいらっしゃるのではないでしょうか。結婚式に夢を見るのは女性の特権です。そういう気持ちを大切にして結婚式の魅力を伝えていくのもプランナーの仕事だと思っています。今回、「私達みたいに幸せな人達を、いっぱい増やしていってね!」とありがたいお言葉をいただきました。これを機会に、年齢に関係なく結婚式をもっと広げていきたいと思っています。

審査員の目

 ともにご高齢で聴覚障害をお持ちの新郎新婦。しかしとても自然で、若いカップルと何も変わらない幸せ一杯の表情が印象的な結婚式でした。この自然さの背景には、二人にあくまでも自然体で過ごしていただきたいと願う中田さんのきめ細やかな配慮と、それを支えるスタッフのチームワークがありました。その心の持ちようが、誰もが微笑まずにいられない温かな結婚式を創り上げました。(2013年9月30日更新)