父が家族を大切に思う気持ちに気付いてほしい
結婚式は、家族の絆を確認する最大のチャンス
プランナー歴3年。自分自身の話をすることで、新郎新婦が身内や自分のことなどを話しやすいよう、友達以上家族未満の関係を築けるよう細かな気配り親身さを大切にしている。
かたくなに列席をこばむ父に、心から幸せと言えない新婦
同じ劇団の舞台監督の新郎と女優の新婦。新婦のお父様が結婚に反対されていて、結婚式に出席されないとのことでした。理由を伺うと、「何度も説得したのですが、行かないの一点張りで」と、新婦は諦めのご様子でした。私は何か出来ることはないかと考え、結婚式の大切さや新婦の思いを記した手紙を、私からお父様へお送りしたいとお願いをしました。すると新婦は、「なかなか幸せいっぱいの花嫁になれないんです」と心の底に秘めた思いを打ち明けてくれました。このままでは幸せに見えるだけの結婚式になってしまう。私は手紙で説得できなければ、直接お話しに行こうと決めました。そこまで介入すべきか自問自答しながらも、新婦に幸せな笑顔で過ごしていただくために、できる限りのことをしたいと思ったのです。結局、手紙に返事はなく、了承を得て、東京から約900キロ離れた新婦の実家に向かうことになったのです。
- バージンロードを歩かれたお父様と新婦に「離れていても家族は家族。この青い空の下で必ずつながっているから、空を見あげる度に今日の日を思い出してください」。そうお伝えし、いつも見守っていてくれている大空へバルーンリリースを行いました。
お父様に直接思いを伝えに、7時間かけ、新婦の実家へ
そして結婚式3日前、ついにお父様とお会いしました。私は思いの丈を涙ながらにお父様に直球でぶつけお願いしましたが、やはり行きたくないとのお返事。ただその理由をお話ししてくださいました。バツイチで子持ちの新郎に、娘を大事にしてもらえるのか。もしかするとバツイチの原因は娘と出会ったことではないか。だとしたら相手の家族に会わせる顔もない。結婚式に行く訳にはいかないと。これらは全て新婦のことを大切に思っているからこそ。その表情や言葉から、新婦には会いたいはずだ、そう私は感じました。そこでお父様に、新郎と相手の家族に会わない導線を作り、新婦の花嫁姿をご覧いただくことを提案しました。するとお父様は身を乗り出しました。しかしそれでもかたくななお父様に、最後はお母様が涙ながらにお願いすると、条件付きながら、ついに参加いただけることになったのです。
- 新婦の花嫁姿と対面したお父様とご家族久しぶりの再会は笑顔でいっぱいでした
家族を思う気持ちに気付いてほしい。結婚式を家族の絆を確認する機会に
私は、お父様の「うちの家族はバラバラ。みんな好き勝手にすればいい」という言葉について考えていました。このままではお父様の家族を大切に思う気持ちに気付かず、今後も過ごしていくことになる。結婚式を家族の絆を確認する機会にしたいと。
そこで結婚式前日に新婦とお父様、お母様との時間を設けました。新婦からは、今まで思いをぶつけたことがなく、しっかり話せるか分からないからと同席を要望いただきました。新婦は、結婚までの経緯を細かく話され、家庭を壊したのではというお父様の誤解に対し、「私はお父さんの娘です。そんなことは絶対にしません」と涙ながらにおっしゃいました。この言葉にお父様は大粒の涙を浮かべ、うなずかれました。その後、新郎からお父様へ挨拶の許可をいただくと、お父様から新郎へ「娘をよろしく頼む」と、ついに結婚のお許しの言葉がおくられたのです。
結婚式当日。お父様とバージンロードを歩きたいという新婦の思いを叶えるため、サプライズで挙式前に家族だけのセレモニーを行うことを提案しました。お父様には導線確認とお伝えし、ガーデン・チャペルへ案内するとそこには家族が。新婦がそっと手を差し出すと、お父様は驚きつつも、腕を組んでチャペルに入場し、一緒にバージンロードを歩かれたのです。結婚式後、お父様からは「本当に感謝し切れない」と、ご家族からは「お父さんがこんなに家族を大切に思ってくれているとは思わなかった」と嬉しいお言葉。そして新婦からは一番聞きたかった言葉をいただけました。「やっと心から笑えるようになりました。とても幸せです。」
女性が人生の中で一番輝く結婚式に、決して悲しい思い出は残したくない
結婚式は新郎新婦を取り巻く絆を確認、また誕生させる大切なスタート地点であり、私にお任せ下さった以上、人として心の底から魂を込めてお手伝いするのが、私のプランナー・ポリシーです。今回の私の行動は行き過ぎた行為だったかもしれませんが、最後に「とても幸せです」という新婦の言葉を聞くことができたときには、間違っていなかったんだと安堵と感謝で、涙が止まりませんでした。今後も幸せいっぱいな花嫁様を見届けて行きたいと思っています。
審査員の目
プランナーがどこまで家庭のことに踏み込むべきか、悩まれる方も多いでしょう。でもプランナーという立場だからこそ見えることもあります。今回思い切って踏み込んだことで、すれ違いの本当の理由に気づき、父娘が向き合う機会をつくりました。プランナーの行動が家族の未来を変えることもできる、そんな大きな可能性を感じさせる発表でした。(2013年9月30日更新)